川崎市では、物価高騰や人手不足といった厳しい経営環境に立ち向かう市内中小企業者等の持続的な成長を支援するため、「持続的成長に向けたデジタル化・生産性向上等支援補助金」の公募を開始しました。この補助金は、IoTやAIなどのデジタル技術の導入や、生産性向上に資する設備投資を通じて、労働時間の削減、生産量増加、ひいては収益拡大を目指す事業者を力強く後押しするものです。
ここでは、公開された情報に基づき、本補助金の目的、概要、申請方法、注意点などを詳しく解説します。
1. 制度の目的:持続的な成長と課題解決を支援
この補助金の主な目的は以下の通りです。
市内中小企業者等の賃上げ原資の確保: 生産性向上による収益増加を通じて、従業員の賃上げに繋げることを目指します。
人手不足への対応: デジタル技術や省人化設備の導入により、労働時間削減や業務効率化を図り、人手不足の解消を支援します。
自立的かつ持続的な成長の促進: 最新技術の活用や生産性向上を支援することで、市内中小企業が変化に強く、将来にわたって成長し続けられるよう後押しします。
2. 補助金の概要:2億円の予算で市内事業者をサポート
予算額: 2億円(申請額が予算額に達し次第、募集は締め切られます。また、予算状況によっては補助率や上限額が減少する可能性があります。)
補助率と上限・下限額:
原則: 補助対象経費の 1/2
上限額:500万円
下限額:50万円
賃上げ申請事業者: 補助対象経費の 2/3
上限額:500万円
下限額:50万円
※賃上げ申請事業者とは、交付申請時点で常時使用する従業員が1名以上在籍し、給与支払総額を1.5%以上増加させる賃上げ計画を策定し、従業員に表明している事業者です。
小規模企業者: 上記に加え、補助対象経費が40万円以上の場合、補助下限額が20万円となります。(賃上げ申請を行う小規模企業者は30万円以上で20万円が下限)
支払方法: 補助事業完了後の確定払いとなります。
対象経費: 補助対象となるのは、デジタル技術の導入や生産性向上設備の導入に直接関連する費用です(詳細は後述)。
3. 補助対象事業者:川崎市内で事業を営む中小企業・小規模企業
主な要件として、以下のすべてを満たす必要があります。
中小企業者または小規模企業者であること: 中小企業基本法に定義される会社または個人事業主が対象です。(みなし大企業、政治団体、宗教団体等は対象外)
川崎市内に事業所を有すること: 本社、支社、工場、店舗など、いずれかの事業所が川崎市内に存在している必要があります。
1年以上の事業継続: 交付申請時点で、川崎市内で1年以上事業を営んでいる必要があります。ただし、以下の施設に入居している場合は、1年未満でも対象となります。
かながわサイエンスパーク
かわさき新産業創造センター
KSP-THINK
明治大学地域産学連携研究センター
KSP Biotech Lab
ナノ医療イノベーションセンター
川崎市民税の納税義務者であること: 法人の場合は法人市民税、個人事業主の場合は個人市民税の納税義務があることが求められます。
市税等の滞納がないこと: 川崎市税および川崎市に対する債務の支払いに滞納がないことが条件です。
法令遵守: 事業を営むにあたり、関連する法令や条例を遵守している必要があります。
反社会的勢力との関係がないこと: 暴力団及び暴力団員でないこと、また、それらと密接な関係がないことが求められます。
同一内容の補助金との重複がないこと: 同一の事業内容や経費について、川崎市または他の行政機関等から既に補助金等を受けていないことが条件です。
※中小企業者・小規模企業者の定義詳細については、募集要領P6-7をご確認ください。
4. 補助対象事業:生産性向上と収益拡大を目指す取り組み
以下の要件を満たす事業が補助対象となります。
市内事業所における設備導入: 川崎市内の事業所において、労働時間の削減や生産量増加などの生産性向上に繋がり、収益拡大が見込まれる補助対象設備等を導入する事業であること。
事前調査の受診: 補助対象設備等を導入する事業所で、事前に「デジタル技術・生産性向上設備等導入調査」を受診し、「確認書」を受領している必要があります。
契約・発注時期: 補助金の交付決定日以降に、補助対象設備等の契約・発注を行う必要があります。
単独申請: 1事業者につき1申請のみ可能です。
補助対象設備等の要件: 後述する「補助対象設備の一覧」に記載されている条件を満たす必要があります。
補助対象経費の金額: 補助対象となる経費の合計額が100万円以上(小規模企業者は40万円以上、賃上げ申請事業者は75万円以上、賃上げ申請を行う小規模企業者は30万円以上)である必要があります。
事業完了期限: 令和8年1月30日(金)までに、補助対象設備等の導入・支払・効果検証を完了し、事業実績報告書を提出する必要があります。
市内中小企業者からの見積もり: 発注1件あたり税込100万円を超える場合は、原則として市内中小企業者2者以上から見積もりを取り、比較検討した上で発注する必要があります。難しい場合は、理由書の提出が必要です。
5. 補助対象設備の一覧:デジタル技術と生産性向上設備
補助対象となる設備等は、以下の通りです。
(1) デジタル技術の導入
労働時間削減や生産量増加等の生産性向上を通じて収益拡大が見込まれ、直接事業に供される情報通信技術(ソフトウェア、システム、ITサービス、ICT機器等)の導入が対象です。
<対象となる例>
AI、IoT、センサーなどを活用した遠隔操作や自動制御システム
会計管理、労務管理、顧客管理、在庫管理、工程管理などの効率化を図るソフトウェア・クラウドサービス
ECサイトの作成
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)導入
オンライン会議システムの導入
ウェブ予約システム、キャッシュレス決済システム、セルフレジシステム
その他、上記システムの導入に必要なICT機器
<対象外の例>
単なる設備の入れ替えや、新機能追加・性能強化に繋がらないもの
ホームページの作成・改修(ECサイト等を除く)
汎用性の高いPC、スマートフォン、タブレット、モニター、Wi-Fi端末など
OS、既存ソフトウェアの更新料、サーバー費用、通信費
(2) 生産性向上設備等の導入
労働時間削減や生産量増加等の生産性向上を通じて収益拡大が見込まれ、直接事業に供される設備等(償却資産として計上されるものに限る)の導入が対象です。
<対象となる例>
製造工程や検査工程の改善に資する設備
調理工程、サービス提供方法の改善に資する設備
注文や会計業務の効率化に資する設備
物流の効率化に資する設備
品質向上やリードタイム短縮に資する設備
<対象外の例>
単なる設備の更新で生産性向上に繋がらないもの
主にエネルギーコスト削減を目的とした設備(創エネ・省エネ設備)
自動車、船舶、航空機
デモンストレーション用の設備
汎用性の高いPC、スマートフォン、タブレット、モニター、Wi-Fi端末、家具など
対象設備に付随しない、または別で発注される備品や工事費用
※導入予定の生産性向上設備等が「機械装置」または「工具」に該当するかは、顧問税理士や管轄の税務署等にご確認ください(参考:国税庁HP掲載の耐用年数表)。
6. 補助対象経費:区分ごとの詳細
補助対象となる経費は、事業区分によって異なります。
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