信託事例①(財産管理)
この場合、Aを委託者、Cを受託者とする信託が考えられます。また受益者は当初Aとして、その死後はBとします。信託はBの死亡時に終了し、権利帰属者はCとします。この信託の対象財産は、賃貸アパートのみとすることも、財産すべてとすることもできます。
このような信託をすることで、Aは賃貸アパートの管理業務から解放され、将来認知症になった際に賃貸借契約が結べないといった不測の事態も避けることができます。CとしてもAに判断能力がある時期からアパートの管理業務を行うことで、資産の承継もスムーズに行えるでしょう。さらに契約の内容によってはCがアパートを高値で売却して資産の組み換えを行うことも可能になります。
又現金も信託財産とすることで、Cに管理を任せることができます。こうした事実を知らせることで、高齢者を狙う詐欺師も手を出せなくなるでしょう。
信託事例②(受益者連続信託)
何も対策しなかった場合、年齢順に相続が発生するとAの死後B・Cが各半分相続し、次いでBの死後その妻とDが各4分の1相続し、結果3人の共有になってしまいます。それでは賃貸マンションの円滑な運用ができるか分かりません。
この場合、Aを委託者、Bを最初の受託者(Bが先に死亡したときはD)とする信託が考えられます。また受益者は当初Aとして、その死後はBとします。信託はA・B共に死亡した時に終了し、権利帰属者はDとします。
このような信託をすることで、①と同様にAは賃貸マンションの管理業務から解放されます。さらに受益者を当初A、次いでBとすることでAは生前に賃料を受け取りつつ、まずはB、最終的にはDへと3世代にわたって財産を譲り渡していくことができます。
但し、次男であるCにはAの相続について遺留分がありますので、信託財産の範囲はCの遺留分に配慮した上で決める必要があります。
信託事例③(信託を利用した相続対策)
この場合、Aを委託者、Cを受託者とする信託が考えられます。また受益者は当初Aとして、その死後はBとします。信託はA・B共に死亡した時に終了し、権利帰属者はCとします。現金を信託財産とし、Cは受託者として信託財産を使って例えば賃貸用マンションを購入することができます。そこから発生する収益は経費を差し引いた上で、受益者であるAやBに支払われます。
このような信託をすることで、Aは望んでいた賃貸用不動産による評価減という相続対策をCに代わりにやってもらい、さらに生前は不動産からの収益も得ることができます。Aの死後はBが収益を得ることにより生活の安定も図られ、最終的にはその資産はCに引き継がれます。