通常の契約では権利者と義務者という二当事者しかいません。これに対して信託においては①委託者、②受託者、③受益者という三当事者がいます。
① 委託者とは、財産を信託する(信じて託す)人です。委託者は、信託する財産をどのように使うか、誰のために使うかなど、信託の目的や受益者を誰にするかを決めます。また、委託者は自分の意志どおりに信託財産が管理・運用・処分されるよう、監督する権限を持ちます。
② 受託者とは、委託者から信託された財産を管理・運用・処分する人です。受託者は、委託者が決めた目的に従って「受益者のために」信託された財産を管理・運用・処分し、その結果生じた利益を受益者に交付します。信託においては、この受託者の権限濫用や逸脱をどのように防ぐかが一番重要な課題になります。
③ 受益者とは、信託された財産から生じた利益を受け取る人です。信託は受益者に利益を与えることを目的に設定されます。受益者はこの自分の利益を守るために、受託者を監視・監督する各種の権限を持ちます。
信託にはこのような三当事者が登場しますが、この三当事者がすべて別人である必要はなく、1人が複数の地位を兼ねることもできます。1人が委託者と受益者を兼ねる場合(自益信託)、委託者と受託者を兼ねる場合(自己信託または信託宣言)などがあります。