注目を集める「家族信託」
2023/06
こうした課題を解消できる制度として、近年注目を集めているのが民事信託あるいは家族信託と呼ばれる制度です。信託銀行や信託会社が免許を得て営利目的で行う商事信託とは区別されますが、民事信託と家族信託は呼び名の違いであって法的には同じものです。かつては一般人にとって使いにくい制度でしたが、平成16年の法改正により自由度が増し家族等の親族間でも活用ができるようになり、利用例が増えています。以下、民事信託と家族信託をまとめて「信託」と呼びます。
信託は財産管理と財産承継を目的とする制度です。①委託者(財産を任せる人)が受託者(任された財産を管理する人)に財産を移転させることによって受託者が委託者に代わって財産を管理します。これが財産管理です。②また、当初の受益者(信託によって生じた利益を受け取る権利を持った人)の受益権が消滅し、信託契約によって定められた次順位の受益者が受益権を取得することができます。これが財産承継です。信託自体にはこの①、②以上の効果、例えば節税効果はなく、税法上も信託を利用することで節税ができるような制度にはなっていません。この後検討する、信託を活用した事例の中には節税効果が生じるものもありますが、これは資産組み換え自体の効果であって信託そのものの効果ではありません。信託はこうした効果を円滑に実現する手段と考えるべきです。最近では信託のこうした目的を逸脱し、「信託にすればすべて解決」するかのような風潮もあります。しかし信託制度が変わってから十数年しかたっておらず、信託でどこまで解決できるか不透明な部分もあります。想定外のトラブルを招かないためにも過度な期待はせず、本来の目的に従って賢く信託制度を活用すべきでしょう。以下、信託の仕組みを見ていきます。
より分かりやすく編集したものは、以下をご参照ください。
https://www.clearthlife.com/knowhow/law/8001