成年後見制度の課題
2023/06
成年後見制度は、このように判断能力や認知機能が低下した人を助ける制度ではありますがいくつか課題も指摘されています。
① 家庭裁判所の監督が強まっている
最近、後見人が被後見人の財産を横領したというニュースを目にします。このような後見人等の支援者の不正が少なからず報告されているため、支援者の職務を直接または間接的に監督する家庭裁判所の姿勢も厳格化しています。一定額以上の現預金について、家庭裁判所は後見人に不正に使わせないため「後見制度支援信託」や「後見制度支援預金」の利用を強く求め、応じない場合には監督人を就けるようになっています。これらは一般の定期預金と同程度の利回りであって、解約には裁判所の指示書が必要になり簡単には引き出せません。この場合額面での本人の財産保護は実現することになりますが、その反面効率的な運用をすることは事実上不可能になります。また弁護士・司法書士等といった専門職でない親族が支援者となる場合であっても専門職と同様、定期的に家庭裁判所に対して報告書や財産目録を作成して提出する必要があり、一般人である親族にとっては大きな負担となります。
法定後見開始の申し立てにあたって、支援者の候補者に親族を記載することはできますが、その候補者が選任されずに専門職後見人等が選任される、あるいは候補者の親族が選任されるものの専門職がこの親族支援者の監督人として選任される場合もあります。専門職が関与すれば、当然こうした人への報酬の負担も発生し、その報酬は本人の財産から支払われることになります。そして一旦始まった成年後見制度は、本人の判断能力が回復したと認められる場合でない限り本人の死亡まで続くため、それだけ本人の財産の目減りを招きます。
なお専門職に支払う報酬については家庭裁判所が決めることとされますが、その目安が公開されています。それによれば法定後見人の基本報酬は本人の財産の額によって月額2万円から6万円、その他特別な職務(身上監護で自宅に頻繁に出動したり、本人が入退院を繰り返したりする場合等)を行った際には、基本報酬の50%以内の付加報酬が加算されます。その他居住用不動産の売却や遺産分割協議への参加等の一定の法律行為を行った場合、その行為の金額によっては数十万円の報酬が加算されることもあります。保佐人と補助人も同様で、後見監督人は後見人等の報酬の半額です。親族が後見人等に就任する場合には原則無報酬ですが、裁判所に「報酬付与の申し立て」をすることで報酬が発生します。
② 柔軟な資産管理・運用が難しい
法定後見制度は、判断能力が不十分になった本人を保護することを目的としています。そのため、新たに株式や不動産の購入・投資などの積極的な資産運用をする、あるいは本来持っている権利を放棄することも基本的には認められません。同様に将来の本人の相続時に課税される財産を減らすいわゆる相続対策、具体的には生前贈与や新たにローンを組むなど、形式的だけでなく実質的に本人のためにならないと判断される行為も認められない可能性が高いでしょう。もちろん、こういった資産管理・運用を本人が望んでいなければ何の問題もありません。しかし本人がこうした方法を現に望んでいる、あるいは望んでいた場合にも「本人保護」を理由にほぼ一律に許されなくなってしまうことは、この制度を利用するにあたって、留意すべきでしょう。
より分かりやすく編集したものは、以下をご参照ください。。
https://www.clearthlife.com/knowhow/law/8013