判断能力や認知機能が低下した人を保護する制度としてまず思いつくのが成年後見制度でしょう。成年後見制度は大きく分けて法定後見制度と任意後見制度からなり、法定後見制度は本人の能力がどの程度残っているかにより「後見」、「保佐」、「補助」の3つの種類があります。
法定後見制度は本人の判断能力が不十分になってから、申し立てに基づいて家庭裁判所の審判により開始され、同時に裁判所の職権により本人の権利を守る支援者(後見人等)が選任されます。この「審判」とは民事・刑事事件での裁判にあたるものですが、事柄の性質から非公開の手続きとされます。
① 後見 「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある」(民法第7条)場合、すなわち、判断能力が欠けているのが通常の状態を対象とします。ここでの本人を被後見人、支援者を後見人と呼びます。被後見人は日常生活に関する行為以外、重要な行為を一人で有効に行うことはできず、後見人は本人の財産に関するすべての法律行為について代理権を持ちます。後見人は本人に代わって法律行為を行い、その効果が本人に及びます。
② 保佐 「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である」(民法第11条)場合、すなわち、判断能力が著しく不十分な状態を対象とします。ここでの本人を被保佐人、支援者を保佐人と呼びます。被保佐人は一人で行為することはできますが、保証人になること、不動産を売買する等法律に定められた重要な行為について保佐人の同意が必要とされ、保佐人の同意がない行為については本人または保佐人が後から取り消すことができます。また家庭裁判所の審判によって同意権・取消権の範囲を広げる、あるいは特定の法律行為について保佐人に代理権を与えることもできます。
③ 補助 「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である」(民法第15条)場合、すなわち、判断能力が不十分な状態を対象とします。ここでの本人を被補助人、支援者を補助人と呼びます。被補助人は原則として一人で行為することができ、日常生活に関する行為以外で家庭裁判所の審判によって、補助人に代理権や同意権・取消権をその範囲を定めたうえで与えます。
任意後見制度は本人が十分な判断能力を持っている時に、あらかじめ任意後見人となる人や、将来その人に任せたい事務の内容を公正証書による契約で定めておき、本人の判断能力が不十分になった後に、任意後見人がその定められた事務を本人に代わって行う制度です。この任意後見制度においては、家庭裁判所によって選任される任意後見監督人が任意後見人の行う職務を監督します。
これらの成年後見制度においては、後見人等支援者の職務は直接または後見監督人を通して家庭裁判所の監督下に置かれ、本人の財産の保護が図られます。また一旦始まった成年後見制度は、本人の判断能力が回復したと認められる場合でない限り、本人の死亡によって後見が終了するまで、途中でやめることはできません。
より分かりやすく編集したものは、以下をご参照ください。
https://www.clearthlife.com/knowhow/law/8013